安い米を買った。

とある店で安い米を5キロ買った。
銘柄米ではなく、ブレンド米だった。

20年か15年か前に、「米もコーヒーもブレンドすればするほど旨くなる」ということを結論としたTV番組を見た記憶があったから、安いが適切なブレンドをしている米は旨いはずだと思って、買った。

 

炊いて食ってみた。

 

まずかった。値段並みという言い方があるが、それ以下だった。

コシヒカリあきたこまちが5キロ1900〜2000円。

そのブレンド米は1400円だった。

 

食べてみて、適正価格は、500円だと思った。500円なら腹も立たない。

しかし、1400円だったから、腹が立った。

 

腹はたっても買った以上、食べきらねばならない。

 

通常の白飯では、不味すぎて半分も食べられない。茶碗一膳のうち六割は残してしまう。ダイエットにはよいが、クオリティ・オブ・ライフ的にはがっかりである。

 

炊き込みご飯やカレーチャーハンなどにしてみた。

ブレンド米にはもち米が混じっているので、チャーハンは向かなかった。もち米が熱で溶けて粘るのである。カレーチャーハンがところどころ団子のようになるのである。

 

炊き込みご飯はありだった。炊きたてのみだが。

時間が経つと古米古々米のいやな匂いが立ってきて、地獄の食べ物と化した。

 

一番ダメだったのが、お茶漬けだった。もち米部分が解けて白濁してひどいシロモノになった。

 

結局、まともな米(ななつぼし)と混ぜる(1:2とか1.5:2とかで)ことでなんとか食べきった。辛い辛い3週間だった。

 

ななつぼしと混ぜるようになっても、微妙な匂いは漂ったから、主に炊き込みご飯で逃げ切った。

 

炊き込みご飯は、具だくさんでやろうとすると大変だ。鶏もも肉、タケノコ、しめじ、こんにゃく、ごぼう、油揚げ、人参……。里芋まで入れる人もいるがあれは最悪だ。せっかくの炊き込みご飯が粘って食感の悪い代物に堕するからだ。とはいえ粘るのが好きな人もいるようだから人それぞれだが。

 

しかし、このように大仰な具を揃えると大変だ。炊き込みご飯をもっと身近なものにするに当たって、より少ない具の種類で満足度はキープできる構成について考えてみた。

 

鶏もも肉はキープしたい。これは絶対的エースである。福岡などは、炊き込みご飯のことを「かしわ飯」というくらいで、鶏肉(=かしわ)は必須である。

 

はっきりいって、鶏もも肉だけでも最低挙行人数を満たしている気がせぬでもない。しかし、栄養価のことも少し考えると、ごぼうは行っておきたい。ごぼうは包丁の背でごりごり皮を削ぎとって調理することが多いが、水道水でしっかり洗えば皮など削がなくてもよいのではないかと考える派閥に生息する者である。いっとき「ごぼう茶」というのが流行ったが、あれはごぼうを皮ごと干して茶としていたのだ。皮はむしろ体にいいはずだ。

 

彩りまで考えると人参である。人参も皮は剥かない。極めて薄い皮なので食感的にも大丈夫だ。土中に育つ根菜類の皮は本体を土中の細菌類から守るくらいの生命力、抗酸化力があるわけで、それを経口摂取しても悪かろうはずはない……と考える派閥に属する者である。

 

全体のパサツキは鶏もも肉の脂分で何とかなるのだが、それでも念の為にという人は油抜きした油揚げ(大阪では薄揚げという)を刻んで入れれば良いだろう。

 

以上である。

 

1)鶏もも肉

2)鶏もも肉ごぼう

3)鶏もも肉ごぼう、人参。

4)鶏もも肉ごぼう、人参、油揚げ。

 

このあたりが最低挙行人数と言っていいのではないだろうか。心に余裕があれば、しめじやタケノコを入れればいい。かつて大根を人参のように細かく切って投入したことがあったがたいへん美味しかったことを付記しておこう。

 

鶏もも肉の代わりに、「塩豚」を投入しても美味しい。

ひき肉よりぶつ切りにした肉のほうが贅沢な感じがあってよりよい。

さつまいもや栗といった甘いものは、私個人の意見だが、合わない。

繰り返しになるが、里芋は粘るから最悪だ。

残った炊き込みご飯は陶器の茶碗に入れてラップして冷蔵し、翌朝、60度くらいに電子レンジで温め、塩昆布を載せ、熱いお茶をかけてお茶漬けとして食すとこれは得も言われぬ美味である。むしろこの茶漬けのために前夜の炊き込みご飯は食べ切らないように調整するくらいである。

 

ただ、安いブレンド米で炊き込みご飯を作った際は、翌朝の茶漬けが旨くなかった。もち米がお茶に溶けて濁るのだった。これはまずかった。

 

味付けは丸美屋などの「炊き込みご飯の素」を使ってもよいし、めんつゆを使ってもよいし、粉だしや醤油や酒やみりんを世間で流布されているレシピ通り使ってもよい。めんつゆが楽である。

 

ことほどさように、まずい米を捌くのは大変なのであった。

安物買いの銭失いとはこのことである。

日々猛省であった。